コーヒー体験記

【潜入】コーヒー加工工場

2017年11月 チェンライ/タイ

みなさん、こんにちは!けんとです。

今回は「コーヒー体験記」第3弾ということで、チェンライ県メースワイ郡のドイトゥン地区というところにあるコーヒー加工工場を見学した時のエピソードをご紹介します。

今回の調査地について

今回の調査地であるコーヒーの加工工場は、タイ政府が主導するドイトゥン・プロジェクトが運営する工場になります。この工場では、「ドイトゥン・プロジェクト」が扱うコーヒーの加工を中心に行なっています。(ほかにも、織物や和紙、陶器などの製品を作っています。)

ドイトゥンのコーヒー工場の場所はこのあたり!

ドイトゥン・プロジェクトとは

ドイトゥン・プロジェクトについては、「コーヒー体験記」第1弾で少し紹介しましたが、ここではもう少し詳しく紹介したいと思います。

そもそも、ドイトゥン・プロジェクトとは、「Doi Tung Development Project(DTDP)」の略称です。(ほとんど変わらないですね笑)

この正式名称からも分かるように、このプロジェクトはDoi Tungと呼ばれる地域に住む人々(山岳少数民族)の生活とDoi Tungの自然環境を持続可能な方法で開発していくことを目的としたプロジェクトになります。

そして、このプロジェクトはプミポン前国王さまの母にあたるシーナカリン前皇太后さまの肝入りで始められました。

それでは、なぜタイ王室(ロイヤルファミリー)がタイ王国の周縁部であるタイ北部山岳地帯でこのようなプロジェクトを始めたのでしょうか?

1980年代のタイ北部山岳地帯の状況

Doi Tung地区がある1980年代のタイ北部山岳地帯は、タイ王国の中でもとくに貧しい地域で、そこで暮らす山岳少数民族の人々は生活するために仕方がなく収益性の高いアヘンの原料であるケシを栽培していました。

違法薬物であるアヘンは、残念なことに世界の麻薬市場で高い金額で取引されている商品の一つです。そのため、途上国の貧しい地域の一部ではケシが栽培されるケースが少なくありません。しかし、そんな収益性の高いケシの栽培は、それを生産する人々と自然環境に大きな悪影響を与えるとても問題のあるものでした。

ケシ栽培を中心にして生計を立てている山岳少数民族の人々が生活する地域では、アヘンの使用による薬物中毒者が多くいたそうです。これは、趣味で使用するというよりかは、山間部の過酷な環境で溜まった疲れやストレスを発散させるために使用されていたことが多かったと言われています。

アヘンを使用するための注射器など

アヘンを吸引している様子

また、ケシ栽培は「焼畑」と呼ばれる方法で栽培するため、自然環境に甚大な被害を与えました。

焼畑は、作物を育てる土地(森)を焼き払い、そこに作物を植え育てる農法です。数年その土地で作物を育てると畑の栄養が少なくなるので、また違う土地を探してそこを焼き払います。これを数年周期で繰り返す農法が焼畑と言われているものです。

ケシ栽培のために森を焼き払うことによって、どのようなデメリットがあるのでしょうか?

一つは、森林が減少してしまうことです。森林が少なくなることによって、そこに住んでいた動植物が住処を追われることになります。一つは、森林が減少することによって山麓で洪水が発生する可能性が高まることです。森林が少なくなると、たくさんの雨を木々が吸収することができず、吸収できない分の雨は洪水となって低地に住む人々に甚大な被害をもたらします。一つは、森を焼き払うことによって、たくさんの煙が発生します。この煙は、山肌に沿って下へと流れ、「煙害」となって人々の生活に悪影響を与えます。

以上のように、ケシ栽培のための焼畑によって、多くのデメリットがあることがわかりました。しかし、当時の彼らは生活するためにケシを栽培するしかなかったのです。

ドイトゥン・プロジェクトのスタート

そんな状況の折に、ドイトゥン・プロジェクトがスタートすることになりました。

1987年、シーナカリン前王太后さま(1900-1995)はタイ北部を視察中にDoi Tungに訪れました。彼女は、そこで生活している人々と朽ち果てた山々をみて、彼らとDoi Tungの自然を取り戻していく決意をしたそうです。

翌年の1988年には、シーナカリン前王太后さまを中心にしてDoi Tungを支援する財団「メーファールアン財団」が発足し、Doi Tung Development Project(ドイトゥン・プロジェクト)が始まりました。

このプロジェクトは、Doi Tungに住む人々とDoi Tungの自然が持続可能(サスティナブル)な方法で発展していくことを使命とした活動です。

ドイトゥン・プロジェクトでは、山岳少数民族がアヘンに頼らず健康的に現金収入を得ることができるように、様々な職業訓練の機会を与えました。たとえば、織物業や製紙業、コーヒーやマカデミアなどの農作物(換金作物)を生産する農業に必要な技術やノウハウを提供しました。

このプロジェクトの結果、この地域でアヘンの栽培がほとんどなくなり、人々の生活も以前と比べて健康的なものとなりました。

この活動の社会的な意味から、UNESCO(国連教育科学文化機関)は2000年に、今は亡きシーナカリン前王太后さまに対して「世界で最も偉大な人物」の一人として賞賛を送りました。

また、ドイトゥン・プロジェクトの活動は、世界的な麻薬撲滅の流れの中に一石を投じた事例として、UNODC(国連薬物犯罪事務所)から賞賛を得ています。

UNODCも認めたドイトゥン・プロジェクト

ドイトゥン・プロジェクトによって作られた商品には、もれなくUNODCのロゴが付いています。

現在は多くの事業を展開

現在、ドイトゥン・プロジェクトは、山岳少数民族の人々に対する直接的な支援だけではなく、バラエティーに富んだ多くの事業を展開しています。

たとえば、ドイトゥン・プロジェクト主催のパッケージツアーやカフェ・レストラン経営。さらに、ライフスタイルショップという多くのドイトゥンブランドの商品を扱うショップを経営しています。

「Doi Tung Cafe」は、首都バンコクとタイ北部を中心に12店舗あります。また、「Doi Tung Lifestyle Shop」は、同じく17店舗展開されています。ここでは、雑貨や服、紙製品、コーヒー、マカデミア、そして花など非常に多くの商品が販売されています。

ドイトゥン・コーヒーが日本にも!?

実はドイトゥン・コーヒー、ちゃっかり日本にもあります。

あの「カルディーコーヒーファーム」やあの「無印良品」で販売されているんです!

ドイトゥン・コーヒー

メーカー:KALDI(カルディー)

https://www.kaldi.co.jp/coffee/straight/straightdarkroasted/post_38.php

メーカー:良品計画(無印良品)

https://ryohin-keikaku.jp/csr/list/list_061.html

いざ工場見学!

コーヒーの精選行程を見学

今回の工場見学では、主にコーヒーの「精選(せいせん)」工程を見ることができました。

コーヒーの精選とは?

コーヒーの精選とは、収穫したコーヒーチェリーからコーヒー豆(種子)を取り出す作業のことです。この工場では、主に2タイプの精選方法を採用していたので、それらの精選方法を紹介したいと思います。

精選工場の外観

コストが最小限で済む「自然乾燥タイプ」

このタイプの精選プロセスは、とてもシンプルです。

まず、⑴収穫したコーヒーチェリーをそのまま天日で乾燥させます。天日で十分に乾燥したコーヒーチェリーは、実の部分と種子の部分がしっかりくっついた状態になっています。それらを分離させるために、⑵「脱穀機」と呼ばれる機械を使って実と種子を分離させます。

以上のようなプロセスで精選する方法を「ドライ式」と呼びます。

天日干しで乾燥された果実付きのコーヒーチェリー

果肉が付いた状態で天日干しされたコーヒーチェリーは、果肉の部分と種子の部分が密着していて、手で引き剥がせないほど固まっている。

コーヒーチェリーを果実と種子に分離させる「脱穀機」

となりの人の声が聞こえないほどの爆音を轟かせている脱穀機。この機械からは大量の粉塵が出ているため、マスクやメガネをしていないと喉や目を痛めてしまう。

ちょっと手間がかかる「水洗いタイプ」

次は「自然乾燥タイプ」よりも、ちょっと手間がかかる「水洗いタイプ」です。

このタイプは、ちょっと複雑です。

まず、⑴収穫したコーヒーチェリーをその日のうちに、皮をむく機械に通します。これは、コーヒーチェリーの鮮度を落とさないためだそうです。(とはいえ、「自然乾燥タイプ」の鮮度が悪いという訳ではなさそうです。)皮をむいた状態のコーヒー豆は、周りにヌルヌルした果肉の層があります。これを取り除くために、⑵水を張ったプールに一晩放置します。一晩放置されたコーヒー豆は、酵素のはたらきでヌルヌルした果肉の層がきれいに剥がれた状態になります。⑶この状態のコーヒー豆を天日で乾燥させます。

以上のようなプロセスで精選する方法を「水洗式(ウォッシュド)」と呼びます。

コーヒーチェリーの天日干し

写真の手前にある「濃い茶色のコーヒーチェリー」が、自然乾燥タイプの天日干しで、写真の奥にある「薄い茶色のコーヒー豆」が、水洗いタイプの天日干しです。

水洗いタイプのコーヒー豆(拡大画像)

麻袋で梱包され、出荷準備満タンなコーヒー豆

麻袋には約60kgのコーヒー豆が入る。この麻袋を1単位として、市場で取引される。

終わりに

今回の記事では、チェンライ県のドイトゥン地区でドイトゥン・プロジェクトが山岳少数民族の生活向上のために、契約農家(山岳少数民族)から収穫したコーヒーチェリーを買い取り、加工している現場を見ることができました。

ロイヤルファミリーによって始められたプロジェクトが、国内外から賞賛されるほどこの地域で大きな役割を果たしたことはもちろん素晴らしいことだと思います。しかし、それ以上に山岳少数民族の人々がケシ栽培に頼ることなく、持続的な手段で発展していこうと強く望み、行動し続けた結果が今のドイトゥンを形作っているのだと思いました。

また、今回コーヒーが加工されている現場を見れたことによって、改めて「コーヒーってすげぇんだな」と思いました。

次回の「コーヒー体験記」第5弾では、チェンライ県ウィアンパパオ郡で山岳少数民族が持続的な方法で現金収入を獲得するために、コーヒーを中心とした換金作物を無農薬で栽培するルンアルン・プロジェクト代表の中野穂積さんとお会いした時のエピソードを紹介したいと思います。

それでは、今回はここで失礼します!今後ともよろしくお願いします。

ドイトゥン・プロジェクトの公式サイトはこちらから!

http://www.doitung.org/about_origin_foundation.php

ABOUT ME
けんと
けんと
初めまして、けんとです! 都内の大学に通っている大学4年生です。 趣味はサイクリングとコーヒーを飲むことです。 このブログでは、私がタイへ留学していた時に経験したエピソードを中心に連載していきたいと思います。 どうぞよろしくお願いします!